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アホで馬鹿で変なネタ小話です。皆守がかわいそうです。

短いのでこちらに。つづきから。

 

 


 

 

 

 

「………」


言葉を失くす、という事はこういうことを言うのだろう。


いつものように屋上へと繋がる扉を開け、冷たい空気を感じながら曇天の空を一瞬仰ぎ、
いつもの定位置に目を向けると。

 

薄ら寒いコンクリートの地面に、《それ》は転がっていた。

 

考えたくはないが、きっと今の自分は相当な間抜け面になっているだろう。

このまま何も見なかったことにして、すべてを忘れ直ぐに立ち去るべきだった。

そう考えたが、《それ》は不可解で異常な存在感を放っていて、《それ》を目に入れた瞬間から、
なんとなく立ち去ることが出来ないでいる。


仕方なく…本当に仕方なく――皆守は3m程離れた距離から冷静にそれを観察して見ることにした。

 

こんな正体不明の場違いも甚だしいイカレた《もの》がある理由。
いや、考えるまでも無い。


あの馬鹿しかいないだろ。


困惑と怒りが入り混じった―加えて言うなら、脱力感だろう―どうしようもない気持ちで
ピクリとも動かないそれを見下ろす。


だが、このまま眺めているだけではただ突っ立っている自分の方が馬鹿みたいだ。


とりあえず、蹴りを入れてみようか。

我ながら名案だと確信し、そう心に決めた瞬間に。

 

 ・ ・
それはうねる様に動き始めた。

  

ジジジ…という音と共にジッパーが下がっていき、膨らみが割れるように
パックリと開いていく《それ》の隙間から、モゾモゾと動く黒髪が見えてくる。

………。

あまりにも予想通りの展開に、何かを考える気力すら奪われ、皆守は小さくため息を吐いた。

あァ…やっぱり。


バサリと布が肌蹴られ、大きな瞳とバッチリ目が合った。

 


「…あ、おはよう甲太郎」


「………九龍」

上半身だけを《それ》から覗かせた九龍が、満面の笑みで挨拶をしてくる。
そもそも今は4時限目の真っ最中だ。すでにおはようと言える時間は過ぎている。

2時限目辺りから姿が見えないと思ったら、何をやっているんだこいつは。

言ってやりたいことは山ほどあったが、どうにも今の九龍には何も言えない。
どうしても《それ》の方に目がいってしまう。

……馬鹿馬鹿しい。

それを振り切るように、今度こそ本気で帰ろうと皆守は踵を返した。


「じゃあな」


「ちょ甲ま、待て待て待ってったら!!あァもうこれ飛び起きるのには向かないな」

絡まる布に足をとられ、慌てながら《それ》から這い出してくる。

常にない鈍い動きを見せる必死な九龍を尻目に、小さく舌打ちしながら、しかたなく待ってやることにした。

そんなものを着て寝てるからだ、という当然のつっこみはあえてしない。
やっと《それ》から這い出てきた九龍の側まで行くと、照れ臭そうな笑みを向けられた。
代わりに、一応聞いておくことにする。

「九ちゃん…珍しく教室にいないと思ったら…あえて聞くが。お前、何をしている」

「え?何ってゲットレした《寝袋》の寝心地をせっかくだから確かめてたんだよ」

あっさりと応える九龍に、今度こそ頭痛がしてきた皆守だった。

「…それは見れば分かる。俺が言いたいのはなんで《それ》である必要があるのかというか
お前一体どこでそんな気色悪いもん手に入れたんだよ?まさか…遺跡じゃないだろうな」

「さすがに遺跡じゃないよ。通販。もう売り切れ続出でなかなか手に入り辛いんだ」

「……」


九龍が中に包まっていた《寝袋》。それは――。

一般人でもエジプト文明の特番などで一度は見たことがあるような、
確か九龍の部屋にも同じような顔をした奴が置いてあったようなとてつもなく有名でベタな。

 

王の棺。

 

 

「ほら、凄いだろこれ。《ツタンカーメン寝袋~ファラオの寝心地~》!!」

 

 

なんだそのネーミングは。


九龍が抜け出してペラペラになった《それ》を、楽しそうに見せてくる。

赤、青と色鮮やかなエジプトらしい定番の模様と黄金に輝くプリントが施されたその寝袋は、
かなりの長さがあり、九龍がすっぽりと埋もれてしまったのも頷ける。
枕代わりのクッションがツタンカーメンの黄金仮面のような顔になっていて、正直かなり不気味だ。

「九ちゃん……」

かろうじて言えたのは、それだけだった。

「ええ!これ面白いだろ?ロゼッタの中でもちょっとしたブームになってるし?」

「嘘吐け。いらねぇよそんな悪趣味な」

「そこそこ安眠できると思うんだけど。まあネタだけどさ」

「ネタだという自覚があるなら精々自室だけで使え」

「ちなみにキャッチコピーはふわふわ温かくてキャンプに、残業にトレハンに大活躍!」

「最後のは嘘だろ」

「これを着て眠れば3000年の眠りをお約束」

「そりゃ遺跡で使えばそうなるかもな。しゃれにならないからやめとけ」

「あはは!それはないけど…甲太郎?」

冷めた目で九龍の手から寝袋を受け取りつつ、つまみ上げながらそれを観察していると、
九龍がどうしたのかと首を傾げている。

「別に…どうしてこうも変なものに手を出すのか考えてただけだ」

「いやーなんとなく?ここまで変なもんがあったらさ、逆に試してみたくなるというか…
あ、そうだ!甲太郎も寝てみる?」

「断固拒否する」

 
「そういわずにさ。実はさ、2つ買うと送料無料だから甲太郎の分も買ったんだよ。だからコレ、プレゼント」

「…………」

一体どこから取り出したのか。いつの間にか現れたもう一つのツタンカーメン寝袋(収納袋付き)を、はい、と手渡される。

思わず捨てたい衝動に駆られたが。

途方も無く嫌そうな顔をしつつも、仮にも少なからず想いを抱いている九龍からのプレゼントと言われれば、その場で即破棄するわけにもいかない。

「あ、チャイムが鳴ってるな。昼休みか…それじゃマミーズに行くか!」

「………ああ」

 

部屋に持って帰ったら、即行でクローゼットの奥にでも押し込むつもりだった。

 

やはりこの異様な寝袋が地面に転がっていた時点で、何も詮索せずにすぐに帰ればよかったと。

こと時ばかりは皆守は本気で後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

実際に売ってます。ツタンカーメン寝袋。

ありえない寝袋を店頭で発見。面白いが絶対欲しくない。ある意味超呪いのアイテム(爆)

ものっすごく嫌そうな被害者、皆守(笑)

…色々とすみませんでしたごめん皆守(土下座)

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